日本音楽ー能

能楽ー中世成立の楽劇

能楽・・・能+狂言

能→狂言→能というふうに能の合間に狂言が上演され、この2つを一括して「能楽」と呼ぶ。

 

能とは?

日本の伝統芸能

仮面(面)をつけた役者が、独特の抑揚をつけてコトバ(詞)を語り、演じ、舞う音楽仮面劇。

地謡(斉唱のコーラス)、4種の楽器による囃子に合わせて舞う。

 

能は文楽、歌舞伎と並んで、わが国の三大演劇と言われる。

しかしこれらは、音楽と不可分に結びついているため、単に演劇というよりは「音楽劇」「音楽舞踊劇」という方が適切である。

 

能舞台の構造

参考:能楽協会能楽辞典」より“舞台”(PDF)

https://www.nohgaku.or.jp/encyclopedia/whats/stage.html

舞台の特徴

◇幕がなく三方に開放されている。

 西洋の舞台や、近世に成立した文楽・歌舞伎の額縁式舞台と異なる。

  ※額縁式舞台:額縁のように3面の壁に囲まれている舞台。

         観客は絵画を見るように一つの方向(第4の壁)から舞台で行われていることをのぞき込む。

◇舞台装置をおかない。

 「作り物」と呼ばれる竹製の道具(山・舟・小屋など)をおくことがあるが、簡単なものであり、装置というより演技を助ける道具である。

f:id:yhre:20220327223442p:plain

【画像】作り物「船」https://www.the-noh.com/jp/sekai/prop.html

 

◇長い橋掛り(橋懸りとも)が斜めにのびている。

 ここは登場・退場の通路だけでなく、様々な演出法に利用される。

 (例)・本舞台とは違う場面として使う

     ・シテが橋掛りに赴く間に舞台の場面を転換する など。

 この橋掛りは後世の歌舞伎舞台の「花道」へと展開した。

◇正方形の本舞台のさらに奥にアト座があり、縦に深い空間を形成している。

 横に広い歌舞伎の舞台とは異なる、独特の舞台空間であると言える。

f:id:yhre:20220327223711p:plain

【画像】歌舞伎の舞台。 額縁式舞台であり、横に広い構造になっている。 手前、観客席の中を通っているのが花道。https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/modules/kabuki_dic/entry.php?entryid=1245

能楽の4つの「方」

能楽の役者は4つのグループのいずれかに属する。

このような分業制度は江戸時代に確立された。

シテ方:主役

ワキ方:シテの相手役、脇役

狂言方狂言を担当する。

囃子方:器楽演奏

①②③は役に扮して舞台に立つことから「立方(たちかた)」といい、演技・声・舞を担当する。

また、②③④をまとめて「三役(さんやく)」と呼ぶ。

 

シテ方

f:id:yhre:20220327224152p:plain

【画像】シテ https://ameblo.jp/yukasikido/entry-12013407564.html

シテ方に属する役者は次のような仕事をつとめる。

◇主役(シテ)を演じる。

 老若男女から、鬼や神、亡霊などのあらゆる役に扮し、能面をつける特権を持つ。

◇シテに連れ立つツレを演じる。

 ツレ:主役のシテに付随して登場する役。

    お供の役も多いが、シテまたはワキに匹敵する重要な場合もある。

地謡(じうたい)

 通常6~10人で構成され、2列で座る。(狂言では3~5人が1列。狂言地謡狂言方から出る。)

 地頭(じがしら)と呼ぶリーダーの統率によってユニゾンで謡う。

◇後見

 舞台監督、世話役、進行の手助けをつとめる。

 

ワキ方

主役であるシテに対し、脇役をつとめる。

僧や神官、天皇のお使い、武士など。

室町末期からシテ方から独立し専門職となった。

現実の男性のみを演じ、女性や老人、神や鬼など異次元の存在に扮することはまったくない。

能面を用いることはなく、常に素顔(直面(ひためん))である。また、舞は舞わない。

 

囃子方(器楽演奏)

能の囃子は、四拍子(笛、小鼓、大鼓、太鼓の4種の楽器)で構成される。

 ※読み方:四拍子(しびょうし)、小鼓(こつづみ)

太鼓は曲によって入る場合と入らない場合がある。

f:id:yhre:20220327224503p:plain

【画像】右から笛、小鼓、大鼓、太鼓。 https://serai.jp/hobby/83876

シテの謡や舞、あるいは地謡を引き立てる役割。

囃子に指揮者はなく、シテや地謡に合わせて演奏するが、シテのかすかな合図や地頭の微妙なタイミングを感じ取って、テンポに緩急をつけたり演奏を変化させたりする。

囃子(はやし)・・・

「囃す」は「栄やす、映やす」とも書くように、本来「映えるようにする、引き立てる」の意味で、手を打ち鳴らしたり、楽器を奏したり、「エンヤコラセー」などの囃しことばを唱えたりして、歌舞の調子をとること。

 

以上、「音楽劇」とも言うべき能の舞台芸術性に着目し、基本知識として

能舞台の構造と特色

・額縁式舞台と異なり、三面に開放されている。

・舞台装置を用いない。

・「橋掛り」が存在する。

・舞台は縦向きに深い。

 

◇4つの「方」とそれぞれの役割

シテ方と三役 

・能の音楽要素である地謡囃子方について

 

について解説した。

 

 

《参考》

月溪恒子『日本音楽との出会い―日本音楽の歴史と理論』東京堂出版, 2010.

文化デジタルライブラリー 「能楽https://www2.ntj.jac.go.jp

能楽協会ホームページ https://www.nohgaku.or.jp/encyclopedia/whats/stage.html