昔話

昔々、あるところにうさぎとかめがおりました。

 

うさぎは銀色のチョッキを着て、青いブローチを付け、真珠のついた金の指輪をしていました。うさぎは穴の中の家に住んでいて、いつものんびりとお茶を飲んだり、お掃除をしたり、森にりんごを取りに行ったりして暮らしていました。

かめは木でできた家に住んでいて、村の中での信望も厚く、あちこちの集まりにお呼ばれしたり、いさかいが起これば仲裁を頼まれたりと、いつも忙しくしていました。かめには大きなこうらがあったので、いつも家に帰るのに、家にはベッドがなくて、パジャマも着ずに大きなこうらの中で寝てしまうのでした。子どもたちはかめを見て「大きなベッドのかめさん」と呼んでいました。

 

うさぎは自分の畑で、銀色のにんじんを育てていました。立派に育ったにんじんを持って市場で売ったり、旅をしながらにんじんを売ることもありました。にんじんはよく売れることもあまり売れないこともありましたが、皆そのにんじんが好きでした。

ある日、うさぎの家にかめがやってきて、言いました。かめはうさぎの穴の家に入ることができないので、家の前で言ったのです。

「こんにちは。銀のにんじんをくれませんか。にんじんのスープを作らないといけないのです。」

うさぎは穴から出てきて、こう言いました。

「スープではなく、ケーキにするのはどうですか。」

かめは言いました。

「光るにんじんのスープを作りたいのです。わたしのおいの誕生日ですから、ケーキではなく、エクレアを用意するのです。おいはエクレアが大好きですから。」

うさぎは、かめがエクレアを食べている姿を想像して楽しい気持ちになったので、こう言いました。

「わかりました。スープにぴったりのにんじんがありますから、あなたにあげましょう。スープにはりんごのみつを入れることです。それでにんじんはよく光りますよ。」

 

うさぎは地下室に行って(穴の家ですから全部地下のようなものですが)、ぶら下げてあるにんじんの中から、とっておきのにんじんを選んで茶色の紙袋につめました。ほんとうは、にんじんは市場でしか売らないのですが、特別なのでリボンも付けました。

穴の外に出ていってかめににんじんを渡すと、かめはコインをいくつか払って、喜んで帰っていきました。

 

次の日、うさぎは市場に行って水晶玉を買いました。透明で、きらきら光る大きな水晶玉です。これで、畑のにんじんの様子が見れるなとうさぎは思いました。家に帰ると、かめが待っていて昨日のお礼にこんぶを3まいくれました。かめが、スープにいれるりんごの木の場所を教えてほしいと言うので、うさぎは教えてやりました。

(続)